グリーン九条の会 第8回例会 講演:伊波洋一氏 『基地なき沖縄を展望して』の開催が決まりました

グリーン九条の会 第8回例会

 講演 伊波洋一氏 『基地なき沖縄を展望して』


■2014年10月11日土14:00開演(13:30開場)
■アスティ45ビル16階 大研修室
 札幌市中央区北4条西5丁目
■参加費:1,000円
グリーン九条の会 第8回 講演会『伊波洋一氏-基地なき沖縄を展望して』チラシ
グリーン九条の会 第8回 講演会『伊波洋一氏-基地なき沖縄を展望して』チラシ ※拡大してご覧になれます


<協賛>
医療九条の会・北海道
たかさき法律事務所九条の会
エンレイソウ九条の会
ビー・アンビシャス九条の会・北海道



※お問い合わせ、参加申し込みは、メールでお願いします
<連絡先>
グリーン九条の会
〒003-0831 札幌市白石区北郷1条7丁目5-8 白鳥方
E-mail : green9zyonokai@gmail.com

『約束の海』のことなど

山崎豊子の絶筆となった『約束の海』は、普段ほとんど目にすることがない海上自衛隊の潜水艦「くにしお」を舞台にした作品であるだけに、異質な世界に触れる興味も手伝って、楽しく読むことができました。艦内での日常業務がきわめて詳細に描出されているためか、福井晴敏の『亡国のイージス』とは違った面白さです。
1988723日の「なだしお事件」をモデルにしていますが、作者はこの事件をできるだけ冷静に捉えようとしていく苦心の様子が、随所にうかがえました。最初に自衛隊バッシングがあり、やがて海難審判で事実が解明されていく展開は、『運命の人』で、「ひそかに情を通じて・・・」という問題にすり替えられた日米密約問題が、裁判の過程で明らかになっていく経緯とよく似た構成になっており、説得力があります。
また、事故後、亡くなった人の仏壇の前で涙する主人公に姿には、『沈まぬ太陽』で日航機墜落事故の犠牲者宅を弔問する主人公の姿が、重なりました。
このように、過去の作品の印象的な場面が、今度の作品でも基層低音として奏でられていることも、この作品の特徴と行ってよいと思います。
この作品は第一部で終っていますが、収録されている「『約束の海』、その後」に主人公が海軍の軍人であった父親と交わす会話があります。
「はい、遠く太平洋までも続くこの海には、大昔から商船のみならず、世界の船が行き交いました。そのうちに、利権が生じ、戦いの場とも化しました。先の戦争では戦艦大和が米軍爆撃によって沈みました。その他にも、日米の多くの戦艦が沈んでいる鎮魂の海なのです。しかし、武力での争いがどんな結果をもたらすか、父さんたちはよく知っているはずです。多くの戦争の犠牲者たちが今も眠っている海を、再び戦場にしては行けないのです」
「そうだ、この日本の海を、二度と戦場にしてはならないのだ。それが俺とお前だけの約束にならぬように、信念を貫き通せ」
 第一部の終わりに、「国を護る、戦争を起こさない努力をする仕事こそ、困難であろうとも、やはり自分が命を燃やす甲斐のあることではないか?」と、主人公が語る場面があります。
作者は、「執筆にあたって」の中で、「戦争は絶対に反対ですが、だからといって、護るだけの力を持ってはいけない、という考えには同調できません。いろいろ勉強していくうちに、『戦争をしないための軍隊』、という存在を追究してみたくなりました」と書いています。上に紹介した会話は、作者の思いを伝えるものになっています。

安倍内閣の暴走ぶりをみるにつけ、「戦争をしないための軍隊」の存在が果たして可能なのか、いささか疑問になってきます。また、自衛隊の問題を、憲法九条との関わりでどのように押さえるか、も重要な視点だと思うのですが、作者の問題意識からは九条が抜け落ちていることも不安材料でした。そして、戦争と平和の問題を一国の枠内だけで考えるのは、この時代、あまり現実的ではないとも思います。

2014・5・26 会員M

富岡製糸場」世界文化遺産のことなど

今朝(427日)の「道新」は、群馬県の「富岡製糸場」が、ユネスコの世界文化遺産に登録される見通しであることを報じていました。昨年の富士山に続くもので、この国の近代の歩みを象徴する建物であるだけに、とても喜ばしい事なのですが、過酷な製糸労働で倒れていった女性たちのことが思い出され、複雑な気持ちになりました。
山本茂美『あゝ野麦峠』は、日本最大の製糸王国である長野県諏訪地方に娘たちを送り出していたのが、飛騨の貧しい農村であったことを明らかにしました。娘たちの悲劇を山本薩夫監督が映画化しました。地井武男が、瀕死の大竹しのぶを背負って野麦峠を越える場面は、今でも印象に残っています。
「道新」は、来年夏の登録を目指す産業革命遺産についても触れていました。その一つに、長崎市の軍艦島があります。最盛期には、5千人を超える人々住んでいた炭鉱です。
最近出版された大沢在昌『海と月の迷路』は、この島を舞台にしたミステリーでとても面白い作品ですが、この島にも語り尽くせぬ悲劇があったことを、韓水山『軍艦島』が、強制的に連行されてきた従軍慰安婦の悲劇として描いています。
この国の歴史の光と影を正当に直視することが、明日への一歩を確かなものにすることであると思うのです。

2014・4・27 会員M

4月5日映画「ファルージャ」はじまりました

4月5日(土)より札幌の映画館シアターキノで、「ファルージャ イラク戦争 イラク人質事件 --そして」(伊藤めぐみ監督)上映がはじまりました。11日まで1日1回16時半からです。
29歳の伊藤さん、機会あって企画が認められ、「ファルージャ」を完成させました。映画は2004年4月に起こった「イラン人質事件」の3人の日本人のうち、高遠菜穂子さん、今井紀明さんの現在を描いています。高遠さんはイラク支援の活動を続け、今井さんは大阪で通信制高校の生徒への支援活動のNPO法人の活動を行っています。それを伊藤監督は密着取材で具体的に伝えてくれていました。
伊藤監督冷静な製作姿勢で映画を作っていたことも実際に見てわかりました。小泉純一郎氏、川口順子氏などにもインタビュー申し込みをしましたが、応じてもらえなかった経過も映画で示されています。当時の日本政府関係者として柳澤恭二氏が登場、当時の状況、今の見解など語っているシーンがありました。柳澤氏の率直な発言、それが救いのひとつかもしれません。3人ともしっかり向き合おうという気持ちが伝わりました。取材に応じなかった人たちとは、えらい違いです。
同じ5日、地元NPO団体が今井紀明さん、伊藤監督を札幌に招き、講演会をあわせて行いました。14時から今井さんの講演、映画をはさんで夜に今井さん、伊藤監督などの講演でした。
3月30日の北海道新聞朝刊にそれらのスケジュールが報じられ、関心をもった私も、映画を含めて講演参加をしました。4月6日北海道新聞朝刊は、その内容などを報じています。
高校を卒業したばかりだった今井さん、今28歳の青年です。社会人としての活動に意欲的にとりくんでいる様子は、本人の口から具体的に話されました。いわゆる帰国後の「自己責任論パッシング」がいかにたいへんな試練だったかということ、それを乗り越えてきている状況の現在であること、今井さん本人が教えてくれました。私もたいへんうれしく今井さんの現在を受け止めました。同時に、当時のパッシングに的確な反論ができなくてたじろいだ自分のことを思い起こしました。今井さんのためにも高遠さんのためにも申し訳なかったとまた反省です。
映画「ファルージャ」、いろいろな意味でぜひ見ていただきたい映画でした。関心を持った方ご覧いただければ幸いです。シアターキノでの上映が終了しても、自主上映会いろいろなところで開いてほしいというのが、伊藤監督の希望、私も心がけたいと考えています。
2014年4月7日 会員UE

     グリーン九条の会第7回例会                         「品川正治さんが問いかけたもの」


昨年8月に89歳で亡くなられた品川正治さんを偲んで企画された当会第7回例会が28日 ホテル ニューオータニイン札幌で開催されました。ご参加いただいた皆さん、ご協力いただいたエンレイソウ九条の会はじめ関係団体各位に心より感謝とお礼を申し上げます。

 品川さんの生前のご経歴、ご活躍は改めて述べるまでもなく戦後日本の経済活動、そして平和・護憲運動に大きな足跡を残されました。20096月当会は第2回例会に品川さんをお招きし「“21世紀の世界と日本の座標軸”を語る」と題して2時間以上にわたるご講演をいただき多くの参加者に大きな感動と勇気をいただきました。
今回そのような当会とのご縁を偲びつつ品川さんの残されたものを些かでも学び語り継ぐという趣旨で 「品川正治さんが問いかけたもの」―    品川正治さんを語り継ぐ―と題して第1部では小森陽一さん(九条の会事務局長・東大教授)に30分の基調講演をいただきそれを受けて1時間のパネルディスカッションがおこなわれました。(パネラー小森陽一さん、高崎裕子さん(弁護士)、植田英隆さん(会社社長)、コーディネーター秋山孝二さん(NPO法人理事長))
基調講演では小森さんより品川さんとの個人的なご関係にも触れつつ自伝ともいえる著書『戦後歴程』で問いかけた事柄について歴史的背景をおさえつつその今日的意味についていくつもの重要なご指摘がありました。
その後コーディネーターが整理したポイントにそって各パネラーからご自分の受け止め方今後への生かし方が熱く語られました。
参加者は会場の制約で42人という少人数でしたが最後まで熱心にお聴きいただき 品川さんの“問いかけたもの”、“残したもの”の一端を共有できたのではと感じています。
また第2部では会場を移し意見交換の場もかねて食事懇談会がもたれました。(参加者30名)美味しい料理やお酒の力も手伝ってか半数をはるかに超える方々から様々な視点、思いのスピーチがありました。ユーモアに富んだ発言の“応酬”に会場内大爆笑、大興奮の場面もありました。

 今回お集まりの皆さんは会社員、公務員、自営業、経営者、団体職員、マスコミ関係、医師、弁護士等に主婦、退職者も含め実に多岐にわたりました。それぞれの方々がそれぞれの視点と思いと方法で品川さんが「問いかけたもの」を受け止め明日へのそれぞれの一歩に繋げていく一助になればと願っています。

2014212日 事務局

(当会事務局に2009年品川正治講演会収録DVD残部あり 11,000円 メールで受付)


百田尚樹「海賊とよばれた男」を読んで


百田尚樹(ひゃくた・なおき)氏の「海賊とよばれた男」(講談社 2012年刊 書き下ろし小説)、機会あって読みました。実在したモデルが企業経営者として戦前戦後苦闘したことを、小説としてまとめたものでした。モデルは人物は出光石油創業者の出光佐三、企業は出光興産です。モデルは広く大きな活動をした人、小説の言及も広い大きな内容となっています。
百田氏は、出光氏のファンらしく、彼の言動(私なりに伝え聞くものも含め)を100%肯定して、主人公をヒーローとして描いています。さまざまな苦難、試練を、リーダーシップを発揮し切り抜けていく描き方は、痛快な印象を与えます。なるほどそういうこともあったか、それは大変だったろうなと、読者に思わせる作家としての力量も示されています。作者の気持ちもはいった、それなりに面白い(題材も登場人物も)小説です。
あらすじは、少し触れるだけにします。主人公国岡鉄造は若いうちから石油の将来性に着目することとなり、石油を扱う企業を創業、大手とも競う会社にしていきます。「海賊」と呼ばれたのは創業期から示した商法からでした。そのことからスタートして国内で国外で、さまざまな問題に遭遇し、切り抜けていきます。国岡商店もそのなかで発展していきます。戦前戦後数十年にわたるサクセスストーリー、障害はじつに多様多彩な山積です。現実に苦労しただろう難局課題について、小説から教えてくれるものになっていました。その辺は手に汗握らせる描写が冴えています。先見性があり、創意工夫に富み、筋を通すことで譲らない鉄蔵の個性的性格もよく書かれているのではないでしょうか。部分的にはそういうこともあったのかと、私も目からウロコの体験もさせられた気持ちです。フィクションの要素がどれくらいかは、厳密には私の手にはあまります。しかし相当程度、過去の事実を踏まえた記述が多いのでしょう。私の知識でもそうと言えることがありましたから。
しかし私の読後感は総体としては、作品には辛いものとなりました。得た事実、できごとなどが、いかに詳細であっても、それでは埋めきれないものを感じたのです。
ひとつめは、主人公国岡鉄造のものの考え方見方についてです。前述したように、モデルが戦前戦後変わらず主張しているらしいことを、小説では無条件に肯定しています。これはかえってひいきのひきたおしになるのではないかとさえ、思いました。戦後の現代では通用しない哲学を、一生言い続けた人間をどう評価しどう見るかは、難しいことだろうとの指摘は、私はしておかなくてはなりません。一例として国岡鉄造が生涯唱え続けた「人間尊重の経営」を指摘しておきますが。ただ会社経営者(とくに創業者)の獅子奮迅、これは求められるものです。どんな壁であろうとも穴を空けなければならないことも場合によってはあります。私もそのような人を複数知っており、その点では鉄造の奮闘ぶり、知人に重ねあわせる気持ちになりました。フィクションとしての小説ですが読みながら「鉄造がんばれ」の気持ちを持ちました。
ふたつめは、百田氏の経済史観、政治史観です。部分的にはとにかく、全体としては、私を満足させるものではありませんでした。残念だけれども、作者は、経済はほんとうのところはわかっていないかもしれません。私の判断ですが、井の中の蛙が井戸から見える空をあおぐ、あるいは人が葦の髄から天をのぞく、といったところがせいいっぱいのようです。ある意味でていねいに調査もし、たくさんの文中のエピソードの示し方にも著者の気合もこもっていました。それなりに面白くまとめられた小説です。しかし、石油が得られたら太平洋戦争(大東亜戦争)も勝ったかもしれないとか、戦後の苦闘の想定図の「まったく一面的構図(私の知識と理解からは現実からはかなり遠いものです)」とかは、とてもいただけるものではありませんでした。おそらく百田流絵空事がたっぷり入っています。私の期待にも応える戦後経済の活写を望むのは、百田氏に対してはないものねだりかもしれません。出光氏をモデルにしているだけ残念ですが。
経済や社会の現実に切り込むような臨場感のある小説も今は登場しています。すぐれたものがいくつもあります。しかし「海賊とよばれた男」はその範疇には入りそうもありません。題材は現実社会からとっているかもしれませんが、できあがった作品は、B級活劇、かっての「講談本」、猿飛佐助や岩見重太郎が活躍するような類の「娯楽小説」と考えさせてもらったほうが良いように思えました。辛い小説かと思ったら、主観による砂糖がたっぷりかかった甘い甘い小説でした。だからなお誰にとっても読みやすいのかもしれません。多くの人に知らなかったことをわかりやすく解説してくれることも含めて。
2013年の本屋大賞第1位に選ばれた「海賊とよばれた男」でした。本屋大賞は自他ともに認める愛書家の書店員さんが選ぶユニークな賞です。でも今回の受賞は、本屋大賞といってもいろいろあるものだと私も認識する機会でした
2014年1月23日 会員UE