半藤一利「あの戦争と日本人」

この1月文藝春秋社より出版された、「あの戦争と日本人」(半藤一利(はんどう・かずとし)著)を読みました。

幕末から太平洋戦争まで11章に分けて、語られています。そして最後に『新聞と日本人 -長い「あとがき」として』で締めくくられています。「オール読物」「文言春秋」に掲載されたものに「鬼畜米英と日本人」と「あとがき」を加えて出版されました。

わかりやすい語り口で、読みやすい文章です。老若男女さまざまな人にぜひ読んでもらいたいものです。読んだ人同士でまた感想や意見も語り合いやすい内容になっています。1930年東京生まれの半藤さん、豊富な話題盛り込みに、若々しさにあふれていました。

「あとがき」の最後ですが、
「ーー本書の第1章でふれたように、攘夷の精神は死なず、ということなのでしょうか。時代がどう進歩しようが、日本人の胸のうちを一尺掘れば攘夷の精神が芽を出す。はたして攘夷こそが国民的アイデンティティーなのでしょうか。

長すぎる『あとがき』になりました。これでオシマイですが、この長い『あとがき』を含めて、本書11章にわたるわがおしゃべりが、読者を退屈させることがないようにーー。
いまはそれを祈るばかりです。

   2010年11月3日
   -64年前に日本国憲法が公布された日
                                         半藤一利」

私的体験ですが、東宝映画「日本の一番長い日」を見たことを思い出しました。実は半藤さんがそのノン・フィクションを書いたのでした( 第10章 8月15日と日本人 の310ページ)。ご本人が35歳、1965(昭和40)年だったそうです。それが評判を呼び、映画化されたのが翌々年といいますから43年前の1967年に封切館で見たのでした。

終戦の決断と「玉音放送」がどうしてなされたのか、それにいたる御前会議の模様などが映画でもなまなましく描かれていました。岡本喜八、ある意味では鋭くえぐった戦争映画で定評のあった監督ですが、史実と真正面からむきあってつくった映画でした。こんな経過で終戦の詔勅となったのかとびっくりした思い出があります。日本人のほとんどが実際の流れを映画で知ったことにもなりました。

半藤さん、私たち後輩たちにじつにさまざまなことをこの本でも語ってくれています。いろいろな人が登場し、幅広い視野で自分の考えをつくりあげていったことがうかがわれます。ひたむきで真摯、でもまことに個性的な半藤節です。それをどう理解しどう受け止めていくか、ひとりひとりの課題であるようです。

2月初め、札幌で伊波洋一さん(前宜野湾市長 昨年の沖縄県知事選候補者)の講演を聞く機会がありました。伊波さんはさらに進んでいく姿勢でした。しっかりした口調で、米軍基地の撤去国外移転という沖縄県民のいまや総意といえる気持ちを日本人全体がどううけとめるかが大切なことと述べています。ここでもどう理解し受け止めていくかが、参加者に問われていました。

2010年2月20日 会員UE