知里幸恵

「知里幸恵銀のしずく記念館」が、去る9月、幸恵の生地である登別市にオープンしました。その地は、「登別の春はどんなにかきれいでせう。うらゝかな春の海はどんなにのどかでせう。春雨のソボソボ降るその景色も何んなに美しいでせう」、「一生を登別でくらしたいと存じます」と書簡に記していた幸恵に最もふさわしい場所であると思います。

記念館には、「私は書かねばならぬ、知れる限りを、生の限りを、書かねばならぬ」という幸恵の思いを込めた「アイヌ神謡集」などの貴重な資料が展示されています。同書の「序」には、和人に侵略される以前のアイヌの「平和の境」の肖像が刻まれています。

今は失われてしまったそれらの日々を今日的に再生させる営みは、憲法の九条と二十五条とを車の両輪とした社会を創り出していくための熱情の淵源となるような気がします。

2010年11月26日 会員M